介護職員の「服薬介助」ってどこまでOK?医療行為との違いと迷ったときのヒント

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介護職員が行う服薬介助、コンプライアンスが気になりませんか?
家族や利用者から服薬介助を頼まれることがあります。
そんな時、どこまで対応していいのか迷ったことはありませんか?

この記事では、服薬介助を頼まれて困ったとき、介護職はどこまで対応できるのか?
法的根拠と実例を交えて説明していきます。

私も、こんな相談を受けたことがあります。

・薬の袋を切ってほしい
・血圧の薬は飲みたくないから今日は飲まないでいい?
・送迎の時に、薬を飲む手伝いをしてほしい

実はこれ、全てその場で対応してしまうと法令違反になる可能性があります。
では介護現場では、どう対応すればよいのでしょうか?

実体験と法的根拠をもとに、正しい判断のヒントをお届けします。

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服薬介助は迷ったら持ち帰るか、その場で相談(判断をしない)

服薬介助について利用者から、あるいは家族からお願いされて迷ったらどうするか?
まずは、介護職としては次の行動をとりましょう。

・介護職員は迷ったときは持ち帰る(判断をしない)
・緊急性を要するときでも、電話で相談する

つまり介護職として迷ったら、その場で判断しないことです。
自分では判断できないことを伝えて、上司や法人、会社に確認しましょう。

一度、受け入れてしまってやっぱりできせんでした。
となると相手を不快にさせてしまいます。
何より、法令遵守に触れてしまったり、利用者に何かあった時にはあなたが責任を問われます。

服薬ではないですが、訪問介護で実際にあった出来事として
お金の引き落としを頼まれたヘルパーがいました。

利用者としては軽い気持ちの頼み事です。
しかしヘルパーも軽い気持ちで、引き受けてしまったのです。

それから、何度も頼まれることになります。
他の事業所が気付き、担当ケアマネに伝えて相談をしました。
しかし利用者としては、他に頼める人がいないと言って聞き入れられなかったのです。

その後、ヘルパーが本人に同行する形でお金の引き落としをすることになりました。

本人が納得するまでに時間がかかり担当ケアマネはかなり苦労したようです。

介護職の現場として、ついありがちですが
利用者からの頼まれごとを安請け合いしないことです。

特に服薬介助は利用者の体調に直接かかわってきます。
介護職員は、頼まれたらその場で判断しない。
持ち帰って相談をしてから決めましょう。

ちょっとした服薬介助でも、何で持ち帰るのか?
次に法的根拠をみていきましょう。

法律で明記されている服薬介助について

法律で認められている服薬介助は厚労省化の通達でも明記されています。
介護職ができる服薬介助の範囲は以下の通りです

・内服薬の服薬介助
・外用薬の塗布
・湿布薬の貼り付け
・点眼薬の使用介助
・浣腸行為
・坐薬の挿入

しかし、厚労省からの通達では次のような文章があります。

患者の状態が以下の3条件を満たしていることを医師、歯科医師又は看護職員が確認し、これらの免許を有しない者による医薬品の使用の介助ができることを本人又は家族に伝えている場合に、事前の本人又は家族の具体的な依頼に基づき、医師の処方を受け、あらかじめ薬袋等により患者ごとに区分し授与された医薬品について、医師又は歯科医師の処方及び薬剤師の服薬指導の上、看護職員の保健指導・助言を遵守した医薬品の使用を介助すること。具体的には、皮膚への軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く。)、皮膚への湿布の貼付、点眼薬の点眼、一包化された内用薬の内服(舌下錠の使用も含む)、肛門からの坐薬挿入又は鼻腔粘膜への薬剤噴霧を介助すること。

①患者が入院・入所して治療する必要がなく容態が安定していること
②副作用の危険性や投薬量の調整等のため、医師又は看護職員による連続的な容態の経過観察が必要である場合ではないこと
③内用薬については誤嚥の可能性、坐薬については肛門からの出血の可能性など、当該医薬品の使用の方法そのものについて専門的な配慮が必要な場合ではないこと

厚生労働省:医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について

さらに注釈として次の文章があります。

病状が不安定であること等により専門的な管理が必要な場合には、医行為であるとされる場合もあり得る。このため、介護サービス事業者等はサービス担当者会議の開催時等に、必要に応じて、医師、歯科医師又は看護職員に対して、そうした専門的な管理が必要な状態であるかどうか確認することが考えられる。さらに、病状の急変が生じた場合その他必要な場合は、医師、歯科医師又は看護職員に連絡を行う等の必要な措置を速やかに講じる必要がある。

厚生労働省:医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について

つまり、こう言えます。

・服薬介助には医師や看護師の確認が必要である
・本人や家族に依頼を受けている、あるいは伝えている
・決して介護職員が、独断で判断や行動をしない

例えば①~③の
・容態が安定している
・連続的な容態の経過観察が必要である場合ではない
・専門的な配慮が必要ではない

これらを判断するのは誰でしょうか?
医師になります。

だから現場で突然、家族や利用者から薬を飲むのを手伝ってほしい。
そう言われても、その場で判断してはいけないのです。
なぜなら、その薬がどんな薬かわからないからです。

法的根拠からの具体例について、見ていきましょう。

介護職員が現場でできる範囲の実例

訪問介護やデイサービスで、服薬介助を依頼されることがあります。
ポイントはすでにすでに医師や看護師などの専門職による判断があり、
利用者自身が使用すると判断した薬は一部、手伝いができるということです。

すべてに共通するのは

・ドクターの許可があること、そして本人や家族への確認をすること
・看護師などの専門職から研修を受けている
・病態の急変など緊急時の対応を事前に決めておく
・ケアプランに具体的な内容が記載されている
・職員への周知と日々の記録をしっかり行う

一つでもぬけると重大なリスクにつながります。
「何か」が起きたとき時、うっかりではすまされません。

だからこそ、慎重に、確実に対応することが求められます。

それでは次に、内服薬から座薬まで、
それぞれの介助方法について確認していきましょう。

内服薬の介助

口から体へ入れる内服薬の介助。
介護職ができるのは以下の通りです。

・時間で指定されている内服薬の介助
・利用者や家族が使用すると「判断」した、頓服薬の介助

具体的には以下の行動です。

・水の準備
・配剤された薬をテーブルの上に出し、確認(飲み忘れないようにする)
・本人が薬を飲むのを手伝う
・後かたづけ、確認

引用元:介護保険最新情報

次の行為はNGです。

・袋に入っている薬を切って取り出す行為
・まとめてある薬を分けて取りだす行為(薬のセット)
・飲もうか迷っている頓服薬を勧めたり、やめるように促すこと

あくまでも、利用者が飲むと判断した薬を飲みやすくするための手伝いをします。
「判断」と「医療行為」は介護職員はできません。

では何をもって「医療行為」か
それは「判断」できる専門職へ相談しましょう。

訪問介護でもデイサービスでも、利用者と関わる時間に服薬があるときは注意です。
事前に医師や看護師へ、介護職が服薬の介助を行ってよいか確認しましょう。

担当ケアマネには、服薬介助をプランに記載させます。
そして日々の記録にも、詳細を記載します。

相談と記録、そして共有がポイントです。
できる限り事前に行っておきましょう。

張り薬の介助

皮膚に直接はる薬について確認しましょう。
厚労省からは湿布薬については、介助できると発信があります。

しかし貼り薬は種類によって、自治体や医師へ確認が必要です。
薬剤によっては、扱い自体が医療行為にあたるかもしれないからです。

例えば、フランドルテープ、フェントステープなどです。

フランドルテープ:心臓の冠動脈を拡げて血流量を増やし、狭心症などの症状を緩和します。
フェントステープ:がんなどの慢性の強い痛みに対して使用される、麻薬性鎮痛剤です。

現場では、利用者はフランドルテープなどを湿布薬と同じ扱いにしてしまいます。
つまり気軽に「貼ってくれる?」とお願いされます。

どう判断しましょうか?
まずはその場では、貼る行為を本人に行ってもらいましょう。
衣類を抑えたり、貼りやすい環境を設定するのみです。

テープには触れないことです。

そして、今後の行動は

・まずは自治体へできる範囲を確認
・医師へ介助方法と緊急時について確認
・全てをケアプランと記録に残す
・職員全員へ周知

ここまでを行っておきましょう。

ちなみにフランドルテープ等については、一部の自治体は介護職員の扱いを禁止しています。
山口県下関市の例があります。

フランドルテープ等の循環器系に作用する貼付薬や、ホクナリンテープ等の
呼吸器系に作用する貼付薬は、副作用の危険性が大きいため、上記通知にて示
されている「皮膚への湿布の貼付」には該当せず、「医行為」に該当するため、
訪問介護員による対応はできません。

平成27年度下関市介護保険サービス事業者集団指導

薬の扱いについては、厚労省からの具体的な発信が少ないです。
そして、場合によっては自治体で判断しているケースもあります。

各自治体に確認、それから医師へ相談、看護師へ共有、記録として残しておく。
この手順を踏みましょう。

点眼薬の介助

点眼薬の介助については、基本的に介護職でも行ってよいことになっています。
例えば薬の種類によっては、できないということはないです。

それでも、確認しておきべきことはしっかり行いましょう。
例えば

・使用方法をしっかり確認すること
・担当の医師からの指示を守って使用すること
・全員への周知と記録の徹底

などをしっかり守りましょう。

点眼薬の使用方法でも様々です。

・2種類以上では5分以上の間隔をあける
・2種類以上では順番がある
・よく振ってから使う

など、細かい使用方法があります。

現場で確認して、全員に共有し記録を残しておきましょう。

外用薬(塗り薬)の塗布

塗り薬はつい、塗るだけなら大丈夫と思いがちです。
しかし、薬剤を塗ることは、場合によっては医療行為にあたります
安易に「判断」しないで医療関係者との連携を取りましょう。

「家族が買ってきた市販の薬を塗ってほしい。」

このような依頼が現場ではよくあります。

それは医療行為にあたる可能性があります。
厚労省からの発信で
ドクター又は看護職員による連続的な容態の経過観察が必要である場合ではないこと。
という文章があります。

利用者が仮に、皮膚状態について経過観察が必要であったとします。
それを知らずに、市販薬を塗ってしまうと、医療行為に当たる可能性があります。

具体的には

・皮膚に出血傾向がある
・皮膚に湿疹などの何かしらの疾患がある
・薬剤によってはアレルギーがある

などの状態では、、外用薬は経過観察が必要かもしれません。

では経過観察が必要かどうか、判断するのは誰でしょう?
医師です。

家族や本人のお願いを安請け合いしないで、確認をしましょう。

また、張り薬と同様、薬剤の種類によっては自治体で介助を禁止している物もあります。
判断が微妙なものは、各自治体へ確認しましょう。

外用薬の介助は一見、問題がないように思えます。
しかし、利用者の皮膚状態や薬剤の種類によっては医療行為にあたります。

医療機関や自治体へ確認をしましょう。
そして、周知と記録の徹底です。

座薬の介助

座薬の介助は医療行為に思われがちですが、介護職員でも行えます。
看護師や医師の指示のもとであれば可能です。

座薬の場合も
医師ー又は看護職員による連続的な容態の経過観察が必要である場合ではないこと。
が条件となります。

実施する前に

・肛門部に出血傾向があるなど、医療的な経過観察が必要な状態でないこと
・使用方法や副作用について、事前に理解しておくこと
・実施前に、看護師などの専門職から研修や指導を受けていること

が満たされているか確認しておきましょう

座薬の種類によっては、血圧が低下する物もあります。
そのため、体調が変化があった時の、対応方法を事前に決めておきましょう。

・肛門部に出血の疑いがある
・実施前に明らかに利用者の体調がいつもと違う
・副作用、あるいは違った症状がみられる

例えばこのような状況に、介護職員自身も気づけることが大切です。

介助を行う際は、専門職の指示を受け、研修を通じて正しい知識と技術を身につける。
その上で条件をしっかり確認し、安全に実施しましょう。

浣腸の介助

浣腸も条件を満たせば、介護職員も行うことができます。

・厚生労働省の通知にある、一定の条件を満たした市販のグリセリン浣腸器を使用する場合
・専門職の指示や研修を受けている
・利用者本人あるいは家族への説明と同意が得られている

実際に私がみたケースでも、介護職員は以下の手順を踏んでいました。

①最初は看護師が実施しているところをみる
②看護師についてもらい、実践してみる。そしてフィードバックを受ける
③一人で行う時は、必ず看護師と利用者に確認してから行う

このように、専門職の指示のもとで、研修を受けた職員が、利用者の同意を得てから実施していました。

それから厚生労働省からの発信でも以下の文章があります。

⑥ 市販のディスポーザブルグリセリン浣腸器(※)を用いて浣腸すること

※挿入部の長さが5から6センチメートル程度以内、グリセリン濃度50%、成人用の場合で40グラム程度以下、6歳から12歳未満の小児用の場合で20グラム程度以下、1歳から6歳未満の幼児用の場合で10グラム程度以下の容量のもの

厚生労働省:医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について

つまり専門職の指示等以外に、行う浣腸のタイプにも条件があります。
しっかり守った上で実施できるようになります。

このように、専門職の許可と職員の研修、本人への許可などをしっかりと行うこと。
といった条件をしっかりと満たしてから実施しましょう。

服薬介助で万が一、体調が変わったら

服薬介助の際、万が一体調に変化があったらどうしようと不安ですよね。
そんな時は必ず専門職に相談し、自己判断は避けましょう。

薬の副作用や、副作用と関係のない体調の変化が出ることがあります。
介護職員が「大丈夫だろう」と判断してしまった。
その結果、利用者の健康に重大な影響を及ぼしてしまう可能性があるからです。

万が一に備えて、以下のような対応が大切です。

・緊急時の連絡先を事前に決める
・体調変化があったら速やかに連絡して判断を仰ぐ
・記録をきちんと保存しておく

もし対応策が決まっていなかったら、担当ケアマネジャーに相談しておきましょう。

絶対に一人で判断したり、報告を怠ったりはしないでください。

利用者、そして自分自身を守る意味でも大切なことです。
体調の変化があった際は一人で判断せず、必ず専門職に報告・相談しましょう。

まとめ:服薬介助のポイントは「判断しない」「相談する」

介護職員の服薬介助について述べてきました。
・利用者から頼まれたとき
・家族から相談されたとき
対応するポイントは次の2点です。

・介護職員は迷ったときは持ち帰る(判断をしない)
・緊急性を要するときでも、電話で相談する

迷わずに専門職と連携を取って、対応しましょう。

そして服薬介助があるときは、条件をしっかりと満たしてから実施しましょう。
服薬介助を行う条件のポイントは以下の通りです。

・医師の許可があること、そして本人や家族への確認をすること
・看護師などの専門職から研修を受けている
・病態の急変など緊急時の対応を事前に決めておく
・ケアプランに具体的な内容が記載されている
・職員への周知と日々の記録をしっかり行う

介護施設では、看護師の人員配置基準が年々緩和されています。
デイサービスやショートステイでも、看護師が常時いなくても運営できるようになりました。

しかしその分、介護職員への負担は大きくもなっています。
そんな時、服薬介助を依頼されたら不安になりますよね?

一部の施設では、看護師の業務を介護職員に任せてしまっているケースもあると聞きます
人員が不足すると、法令遵守ができなくなるのです。

服薬介助は、介護職員が専門職と連携しながら、安全に行うべき重要な支援です。
自分の判断に迷ったときは、立ち止まって確認する行動が大切です。

利用者のためにも自分の身を守るためにも、服薬介助のルールは知っておきましょう。
そして、法令遵守をしつつ、利用者のニーズにも答えられる仕事をしましょう

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